先に結論
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A」は、仲介契約・FA契約の締結前に書面で説明する事項に「担当者の保有資格、経験年数・成約実績」を含めています(2026-10-22確認)。説明者は「十分な経験・能力を有する者が行うことが望ましい」とされ、特定の資格は条件にしていません。資格保持者に説明を求める案は2026年3月17日の検討会資料にある検討段階のものです。まず説明書面の保有資格欄と、担当者の資格の棚卸しから整えてください。
この記事の結論
- 01
中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&Aの④No. 3は、仲介契約・FA契約の締結前に説明する事項に「担当者の保有資格、経験年数・成約実績」を挙げている(2026-10-22確認)。
- 02
同Q&Aの④No. 10は、説明者を「十分な経験・能力を有する者が行うことが望ましい」と整理しており、特定の資格を持つ者に限る記載はない。
- 03
中小企業庁の検討会(第4回・2026年3月17日)資料2は、登録機関に「重要事項説明を当該資格保持者が行うことを求めるなど」をガイドラインで定めることを「検討」と記載している。確定した制度ではない。
- 04
同資料p.21は、ガイドラインが求める方式の重要事項説明をしないまま契約を結んだ事例や、電話での説明が不十分だとのクレームにつながった事例を挙げている。
- 05
支援機関が先に整えるのは、説明書面の保有資格欄、担当者ごとの資格の棚卸し、説明者を決める社内ルールの3つ。
重要事項説明で担当者の保有資格は説明が必要?(最終確認日:2026-10-22)
中小企業庁の「中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A」は、④「M&A仲介契約・FA契約締結前の書面による重要事項の説明」のNo. 3で、説明が必要な事項の一つに「担当者の保有資格、経験年数・成約実績」を挙げています(2026-10-22確認)。同じ回答は、手数料と、それを対価として提供する業務の内容を「M&Aのプロセス」ごとに説明することも求めており、担当者の資格は手数料と同じ書面で説明する項目です。
ガイドラインの参考資料11「M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル」は、17の記載項目のうち3番目に「(3) 担当者の保有資格、経験年数・成約実績」を置いています(経済産業省サイト掲載のPDF、2026-10-22確認)。保有資格の記入例は「公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士、行政書士、司法書士、社会保険労務士、その他会計に関する検定(簿記検定、ビジネス会計検定等)等」、経験年数の記入例は「M&Aアドバイザーとしての経験年数が〇年〇か月」です。成約実績の記入例は載っていません。
| 項目 | 公表資料の記載 | 出典 |
|---|---|---|
| 説明する担当者の情報 | 「担当者の保有資格、経験年数・成約実績」 | 中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A ④No. 3 |
| 保有資格の記入例 | 公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士、行政書士、司法書士、社会保険労務士、会計に関する検定(簿記検定、ビジネス会計検定等)等 | 中小M&Aガイドライン 参考資料11 重要事項説明書サンプル (3) |
| 経験年数の記入例 | 「M&Aアドバイザーとしての経験年数が〇年〇か月」 | 中小M&Aガイドライン 参考資料11 重要事項説明書サンプル (3) |
| 説明する人 | 「十分な経験・能力を有する者が行うことが望ましい」 | 中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A ④No. 10 |
| 説明する相手 | 契約を締結する権限を有する者。法人の場合は代表者又は契約締結について委任を受けた者 | 中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A ④No. 9 |
| 説明の時期 | 仲介契約・FA契約等の締結前。依頼者が十分に検討できる適切なタイミング | 中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A ④No. 8 |
| 説明した記録 | 説明の実施を書面上明らかにする趣旨で、依頼者の記名・押印又は署名欄や確認のチェック項目を「設けていただいてかまいません」 | 中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A ④No. 7 |
比べた条件のまま、いまの理解度を無料で確認できます。
当メディア運営者が提供するサービスです(開示)
重要事項説明を担う担当者の知識を、同じ教材・同じ基準でそろえる進め方を確認できます(当メディア運営者が提供するサービスです)。
重要事項説明は誰が行う? 資格保持者でないといけない?
中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A ④No. 10は、説明者について「説明は、依頼者から契約内容等について質問や意見を受けた場合に、適切に対応できるような十分な経験・能力を有する者が行うことが望ましいと整理しております。」と回答しています(2026-10-22確認)。基準は資格の有無ではなく、質問に適切に対応できる経験・能力です。重要事項説明書サンプルの17項目にも、説明者を特定する欄(説明者の氏名など)は含まれていません((3)は担当者の保有資格・経験年数・成約実績を書く項目です)。
つまり2026-10-22時点の公表資料では、資格を持たない担当者が説明しても、それだけでガイドラインに反するとは読めません。ただし、新人が一人で説明し、手数料の算定方法やテール条項の質問に答えられない状態は、④No. 10の趣旨から外れます。
社内ルールでは、説明を担当できる者の条件(経験年数や同席の回数など)を自社で定め、条件を満たさない担当者は満たす者と同席して説明する運用が考えられます。条件の数値は公表資料に定めがありません。
「重要事項説明を資格保持者が行う」は決まった?
決まっていません。中小企業庁の「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第4回検討会 資料2、2026年3月17日)は、「並行して、中小M&Aガイドラインにおいて、「M&A支援機関登録制度」の登録機関に対して、自社の担当者への当該資格取得の推奨や重要事項説明を当該資格保持者が行うことを求めるなど、資格の浸透を通じた市場の健全化を図ることを検討。」と記載しています(2026-10-22確認)。文末は「検討」で、ガイドラインの改訂として公表されたものではありません。
同資料p.12の「(参考)資格WGにおける委員意見サマリ」には、「資格取得のインセンティブとしても、重要事項説明を資格保有者が行うことを奨励もしくは必須とする旨を、中小M&Aガイドライン上に明記すべきではないか。」という委員意見が載っています(2026-10-22確認)。「奨励」と「必須」が並んでおり、どちらにするかも決まっていません。
なお中小企業庁の第4回検討会 資料3「試験科目詳細」は、M&A実務の項目の一つに「重要事項説明」を挙げています(2026-10-22確認)。試験の詳細は本体サイトの中小M&A資格試験の最新情報にまとめています(当メディア運営者が提供するサービスです)。
重要事項説明をめぐってどんなトラブルが起きている?
中小企業庁の第4回検討会 資料2 p.21は、「窓口に寄せられている情報の例」として、ガイドラインが求める方式での重要事項説明をしないまま契約を結んだ事例などを挙げています(2026-10-22確認)。
| 資料に挙がった事例(要旨) | 関係する重要事項説明書サンプルの項目 | 社内体制で手当てできること |
|---|---|---|
| ガイドラインが求める方式での重要事項説明をしないまま、専任条項・中途解約違約金条項のあるアドバイザリー契約を締結した | (8) 専任条項、(12) 契約の解除 | 契約締結の前に重要事項説明書の交付・説明が済んでいるかを、契約書の決裁時に確認する |
| 重要事項説明や契約締結を対面で行わず電話で行い、十分な説明を受けられなかったとのクレームにつながった | 説明全体 | 説明の方法・日時・説明者・相手方を記録し、依頼者の確認欄(Q&A ④No. 7)を設ける |
| 専任条項がないのに、テール条項に基づく請求が行われた | (10) テール条項 | テール条項の有無と対象を説明書面に明記し、説明者が質問に答えられるようにする |
| 試算額を下回る企業価値となったのに、受領した中間金が返還されなかった | (4) 手数料(返還の欄) | 中間金の返還条件を説明書面に書き、営業段階の試算額の伝え方を社内で統一する |
どの事例も、保有資格欄を埋めるだけでは防げません。説明者がテール条項や返還条件を自分の言葉で説明できるかが分かれ目です。
支援機関が今から整える社内体制のチェックリスト
社内体制は、中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&Aの④の章を手元に置き、次の8項目で点検すると漏れが減ります(2026-10-22確認の公表資料に基づく)。
- 重要事項説明書に「担当者の保有資格、経験年数・成約実績」を書く欄がある(Q&A ④No. 3、サンプル (3))
- 保有資格欄に書く資格を、担当者ごとに資格名・取得年・登録や会員の状態まで一覧で把握している
- 経験年数の数え方(サンプルの記入例は「M&Aアドバイザーとしての経験年数が〇年〇か月」)を社内で統一している
- 成約実績の数え方(担当者個人の関与か会社全体か、関与した工程の範囲)を社内で決めている(サンプルに記入例がないため)
- 説明者を決めるルールがあり、依頼者の質問に適切に対応できる者が説明する体制になっている(Q&A ④No. 10)
- 説明の相手が契約締結権限を持つ者であることと、締結前に検討時間を確保したことを記録している(Q&A ④No. 8・No. 9)
- 説明の実施を書面上明らかにする確認欄を設けている(Q&A ④No. 7)
- 検討会の動き(重要事項説明を資格保持者が行う案)を追う担当者を決め、資格の要件が公表されたときの社内対応の順番を決めている
8項目のうち3つ以上が未整備なら、書面の改訂と並行して、説明を担う担当者の知識の水準をそろえる段取りを始めてください。担当者の学習を同じ教材・同じ基準でそろえたい場合は、法人・団体向けの学習プランで進め方を確認できます(当メディア運営者が提供するサービスです)。
担当者の資格の棚卸しはどう進める?
担当者の資格の棚卸しは、重要事項説明書サンプル(中小M&Aガイドライン 参考資料11)の保有資格の記入例に沿って、資格を4つの区分に分けると進めやすくなります(2026-10-22確認)。
| 区分 | 資格の例 | 説明書面に書くときの注意 | 確認しておくこと |
|---|---|---|---|
| サンプルが例示する国家資格 | 公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士、行政書士、司法書士、社会保険労務士 | 資格名と、今回の業務で資格を生かす場面を分けて書く | 中小企業庁の第4回検討会 資料2は、仲介・FA業務が各士業の独占業務(弁護士法第72条、税理士法第52条等)に抵触しないことを前提とすると記載。独占業務の受任と混同させない |
| サンプルが例示する会計の検定 | 簿記検定、ビジネス会計検定 | 級まで正確に書く | 合格した級と年 |
| M&A・事業承継の民間資格(サンプルの例示にはないが「等」で括られている) | 金融業務2級 事業承継・M&Aコース、M&Aシニアエキスパート、JMAA認定M&Aアドバイザー、M&Aスペシャリスト など | 運営団体が定める認定名称で書く(M&A資格の名刺への正式な書き方を参照) | 会員資格と一体の認定は、会員を続けているか |
| 中小M&A資格試験(中小企業庁が運営主体) | 試験日・受験料・正式名称は未公表 | 2026-10-22時点で書ける資格名はない | 中小企業庁の公表を待ち、合格者の登録制度の案(合格後の登録・更新の検討状況)も合わせて追う |
Q&Aとサンプルは、資格のない担当者の書き方を示していません。経験年数・成約実績を正確に書き、説明者の条件で補うのが現実的です。資格のない担当者は、新しい国の試験の4領域(M&A実務、財務・税務、法務、倫理・行動規範)のどこが弱いかを先に把握すると、学習の順番を決めやすくなります。個人単位で当たりをつけるなら無料の20問診断が使えます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。
登録機関に社員の資格取得の推奨を求める案と、推奨するかどうかの判断表はM&A支援機関は社員に資格取得を推奨すべきかで整理しています。機関単位の登録制度そのものの要件はM&A支援機関登録制度と資格の関係にまとめています。
注意点・よくある失敗
- 検討会資料の「重要事項説明を当該資格保持者が行うことを求めるなど」を、義務化が決まったものとして社内や顧客に伝える。第4回検討会 資料2の文末は「検討」です。
- 保有資格欄に、合格しただけで登録していない資格や、会員を辞めて名乗れなくなった認定を書く。棚卸しの段階で、資格の状態まで確認してください。
- 資格があることを理由に、経験の浅い担当者に一人で説明させる。Q&A ④No. 10の基準は、依頼者の質問に適切に対応できる経験・能力です。
- 成約実績の数え方を担当者任せにする。サンプルに記入例がないため、会社として数え方を決めないと、担当者ごとに基準がばらつきます。
- 重要事項説明書を契約書の文言の転記で作る。Q&A ④No. 5は、契約書の文言の転記ではなく依頼者が理解しやすい記載を推奨しています。
- 説明の方法と相手を記録しない。第4回検討会 資料2 p.21には、電話での説明が不十分だとのクレームにつながった事例が挙がっています。
よくある質問
中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A ④No. 10は、説明者を「十分な経験・能力を有する者が行うことが望ましい」と整理しており、特定の資格の保有を条件とする記載はありません(2026-10-22確認)。重要事項説明を資格保持者が行うことを登録機関に求める案は、中小企業庁の第4回検討会 資料2(2026年3月17日)に「検討」として示された段階です。
中小M&Aガイドラインの参考資料11(重要事項説明書サンプル)は、公認会計士、税理士、中小企業診断士、弁護士、行政書士、司法書士、社会保険労務士、会計に関する検定(簿記検定、ビジネス会計検定等)を例に挙げ、最後を「等」で結んでいます(2026-10-22確認)。M&A・事業承継の民間資格も、運営団体が定める認定名称で正確に書くのが基本です。
中小企業庁の公表資料で、重要事項説明を資格保持者が行うことを定めたガイドラインの改訂は確認できません(2026-10-22確認)。第4回検討会 資料2はこれを「検討」と記載し、同資料p.12の委員意見も「奨励もしくは必須とする旨」と両案を並べています。対象となる中小M&A資格試験の試験日・受験料・正式名称も未公表です。
中小M&Aガイドラインの参考資料11は、経験年数の記入例を「M&Aアドバイザーとしての経験年数が〇年〇か月」としています(2026-10-22確認)。成約実績には記入例が載っていないため、担当者個人の関与か会社全体か、どの工程まで関与したものを数えるかを、各支援機関が社内で決めておく必要があります。
中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A ④No. 6は、「説明すべき重要な事項が適切に記載されたものであれば書面の様式は問いません。」と回答しています(2026-10-22確認)。独自の書式でも、担当者の保有資格、経験年数・成約実績を説明する項目は入れておきます。
一次資料・参考資料
- 一次資料中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)に関するQ&A」(④No. 3〜No. 10)確認日:
- 一次資料中小M&Aガイドライン 参考資料11「M&A仲介契約/FA契約 重要事項説明書サンプル(PDF版)」確認日:
- 一次資料中小企業庁「中小M&Aガイドライン(第3版)」掲載ページ(2024年8月改訂)確認日:
- 一次資料中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第4回検討会 資料2・2026年3月17日。p.12 委員意見サマリ、p.21 窓口に寄せられている情報の例)確認日:
- 一次資料中小企業庁 第4回検討会 資料3「試験科目詳細」確認日:
- 一次資料中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第5回検討会 資料2・2026年7月21日)確認日:
- 一次資料中小企業庁 中小M&A資格試験実施事業 委託先の採択結果(2026年5月1日)確認日:
更新・訂正履歴
- 初回公開
公開時に、記載の数値・制度情報を一次資料・公式情報で確認しました。
読んだ内容を、無料の確認へつなげる
重要事項説明を担う担当者の知識を、同じ教材・同じ基準でそろえる進め方を確認できます(当メディア運営者が提供するサービスです)。
当メディア運営者が提供するサービスです(開示)