先に結論
中小M&A資格試験の勉強方法は、公表資料の問数と配点から逆算して組みます。4科目・最大60問程度のうち、M&A実務21〜24問程度と倫理・行動規範15問程度で過半を占め、科目別に50%程度の最低ラインも想定されています。配点順に時間を割り、最低ラインを下回りそうな科目だけ最優先に引き上げるのが基本です。まず科目別の現在地を測り、試験日から週単位で逆算してください。
この記事の結論
- 01
出題は「M&A実務」「財務・税務」「法務」「倫理・行動規範」の4科目を120分でまとめて解く想定。問数はM&A実務が最も多く、倫理・行動規範が次に続く。
- 02
学習時間は配点に比例させるのが基本。ただし最低ライン(50%程度の想定)を割りそうな科目だけは、配点に関係なく最優先にする。
- 03
合否は、初回は各試験日の得点率などを踏まえた相対評価で決める想定。「何点取れば安全」と言えない以上、科目別の正答率を上げ続けることが管理指標になる。
- 04
試験日は未公表。一斉開催とした場合の想定は1月〜2月の3日間で、ここから週単位で逆算した計画を持っておくと、公表後すぐ動ける。
- 05
倫理・行動規範は暗記でなく判断の練習。検討会の資料で、禁忌肢(明らかな違反の選択肢)を設定する方向が示されている。
2026年9月時点で「確定・想定・未公表」を分ける
勉強の計画は、確かな情報の上に組む必要があります。公表資料の言葉を、確定・想定・未公表の3つに分けて整理しました。
| 項目 | 状態 | 公表されている内容 | 出典 |
|---|---|---|---|
| 試験の運営 | 確定 | 中小企業庁が運営主体。令和8年度(初回)の試験実施事業は株式会社銀行研修社に委託 | 検討会 資料2(2026年3月17日)・採択結果(2026年5月1日) |
| 試験方式 | 想定 | 全国の試験会場でのCBT方式。各都道府県に少なくとも1か所の会場 | 募集要領(2026年3月27日) |
| 試験時間・問数 | 想定 | 4科目をまとめて120分。設問数は合計で最大60問程度 | 募集要領 |
| 合格基準 | 想定 | 総得点の70〜80%程度を想定しつつ、初回は各試験日の得点率などを踏まえた相対評価で合否を判定 | 募集要領 |
| 科目別の最低ライン | 想定 | 科目ごとに50%程度 | 検討会 資料2(2026年3月17日) |
| 試験の時期 | 想定 | 一斉開催とした場合、1月〜2月の、可能な限り連続した平日2日間と休日1日間の3日間(詳細は中小企業庁と協議) | 募集要領 |
| 試験日・受験料・申込方法・正式名称 | 未公表 | 受験料は有償を想定し、金額は事業期間中に中小企業庁と協議して決める | 募集要領 |
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4科目の問数と配点:時間配分の土台
中小企業庁の試験実施事業の募集要領には科目ごとの問数が、検討会の資料2には配点の割合が示されています。2つを並べると、どこに時間を割くべきかが見えます。
| 科目 | 問数(募集要領) | 配点の想定(資料2) | 学習時間の配分の目安 | 学ぶ順番 |
|---|---|---|---|---|
| M&A実務 | 21〜24問程度 | 35〜40%程度 | 約37.5% | 1番目 |
| 倫理・行動規範 | 15問程度 | 25%程度 | 25% | 2番目 |
| 財務・税務 | 12〜14問程度 | 20〜23%程度 | 約21.5% | 3番目(苦手なら最優先) |
| 法務 | 10〜11問程度 | 17〜18%程度 | 約16% | 4番目(捨てない) |
「学習時間の配分の目安」は、配点の想定を丸めて時間の比率に置き換えたものです。公式に示された学習時間ではありません。M&A実務と倫理・行動規範を合わせると、配点の6割〜6割5分程度を占めます。一方で、配点が最も小さい法務にも50%程度の最低ラインが想定されているため、どの科目もゼロのままにはできません。
Step 1|最初に「4科目の現在地」を測る
学習計画が崩れる原因の多くは、配分を勘で決めることです。最初に本番に近い形式で解き、科目別の正答率を出してから配分を決めてください。無料の20問診断で、弱い科目の見当をつけられます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。
測った結果は、科目ごとに次の3つへ分けます。
- A:最低ライン(50%程度)を下回る → 最優先。基礎からやり直す
- B:50〜70%程度 → 配点に比例して演習を積む
- C:70%を超える → 維持。週1回の演習で力を落とさない
A分類の科目がある間は、配点の比率よりA分類の解消を優先します。科目別に50%程度の最低ラインが想定されているため、1科目の穴がそのまま不合格の理由になりうるためです。
Step 2|科目別の勉強方法
M&A実務(21〜24問程度・配点35〜40%程度)
主教材は中小M&Aガイドライン第3版です。事前相談→企業価値の評価→マッチング→基本合意→デューデリジェンス→最終契約→クロージング→統合後、というプロセスの順に読み、各段階で「誰が・何を・なぜするのか」を自分の言葉で説明できるようにします。検討会の資料3(試験科目詳細)は出題項目のリストとして使い、●印(優先出題が想定される項目)から優先して押さえます。
倫理・行動規範(15問程度・配点25%程度)
最も差がつきやすい科目です。中小企業庁のスキルマップ資料は、倫理・行動規範を「基本原則」「善管注意義務・職業倫理」「広告・営業」「品位」「法令等の遵守」「不適切な個人・組織、反社等との関係」「情報管理」などの区分で整理しています。暗記ではなく、場面を想定して「この行為は許されるか」を判断する練習が中心になります。検討会の資料で禁忌肢(明らかな違反行為の選択肢)を設定する方向が示されているため、「これは一発アウトか?」という視点で選択肢を見る癖をつけてください。区分ごとの読み方は倫理・行動規範の学び方で整理しています。
財務・税務(12〜14問程度・配点20〜23%程度)
簿記の基礎→財務諸表の読み方→企業価値評価の考え方→株式譲渡・事業譲渡などスキーム別の税務、の順に下から積みます。一次資料だけではカバーしにくい科目なので、苦手な人はこの科目に限って市販の基礎教材を1冊使うのが現実的です。選び方は中小M&A資格試験のテキストの選び方を参照してください。
法務(10〜11問程度・配点17〜18%程度)
会社法の全体ではなく、株式譲渡と事業譲渡の違い、契約の構成と表明保証、労務の引継ぎなど、M&Aのプロセスに直結する論点に絞ります。配点は最小ですが、最低ラインの想定があるため後回しにしすぎないことが大切です。
Step 3|総学習時間を配点で割る
「合格に必要な時間は何時間」という公式の数字はありません。そこで、自分が確保できる総時間を決め、配点の比率で割る方法をとります。下の表は、総時間ごとに配分を計算した例です。配点の想定の中央値をもとに合計が100%になるよう調整した比率(当サイトの勉強時間シミュレーターと同じ)で按分した計算例で、必要時間の目安ではありません。
| 確保できる総時間 | M&A実務(約37.5%) | 倫理・行動規範(25%) | 財務・税務(約21.5%) | 法務(約16%) |
|---|---|---|---|---|
| 60時間 | 約22時間 | 約15時間 | 約13時間 | 約10時間 |
| 100時間 | 約37時間 | 約25時間 | 約22時間 | 約16時間 |
| 150時間 | 約56時間 | 約38時間 | 約32時間 | 約24時間 |
Step 1でA分類になった科目があれば、その科目に全体の1割程度を上乗せし、ほかの科目から配点の比率に応じて減らします。期間と週の学習時間を入れて配分を出したい場合は、勉強時間シミュレーターで計算できます。
Step 4|試験日から逆算する週間スケジュール
試験日は未公表ですが、公表を待ってから計画を立てると準備期間が短くなります。試験日を仮に置き、週単位で逆算した計画を先に作っておき、公表されたら日付だけを差し替えるのが効率的です。
| 試験日までの期間 | やること | 教材と演習 |
|---|---|---|
| 16〜13週前 | 現在地の測定。ガイドライン第3版を1周通読し、4科目をA・B・Cに分類 | 無料の診断・一次資料 |
| 12〜9週前 | A分類の科目の基礎固め。財務・法務が弱ければ基礎教材を1冊 | 基礎教材・資料3の項目リスト |
| 8〜5週前 | 科目別の演習。倫理・行動規範は週2回、場面の判断練習 | 科目別の問題演習 |
| 4〜2週前 | 本番形式(120分・60問程度)の通し演習を週1回。科目別の正答率を記録 | 本番形式の模試 |
| 最後の1週 | 間違えた論点の見直しだけに絞る。新しい教材には手を広げない | 自分の誤答リスト |
インプット(読む)とアウトプット(解く)の比率は、前半は2対1、本番形式の演習に入る4週前からは1対2に逆転させるのが目安です。直前期の通し演習には、本番想定の60問模試が使えます(当メディア運営者が提供する無料サービスです)。
働きながら進める1週間のメニュー例
週に5〜7時間を確保できる人を想定した組み方の例です。平日は短く区切り、週末に演習と見直しをまとめます。
| 曜日 | 時間の目安 | やること |
|---|---|---|
| 月 | 45分 | ガイドライン第3版の該当章を読み、要点を3行で書く |
| 火 | 45分 | 月曜に読んだ範囲の問題を解き、間違えた論点を誤答リストへ |
| 水 | 45分 | 倫理・行動規範の場面判断を5問。理由を一文で書く |
| 木 | 45分 | A分類の科目(財務・税務や法務)の基礎教材を1節 |
| 金 | 休み | 予備日。遅れた分を取り戻す |
| 土 | 90分 | 科目別の演習。正答率を科目ごとに記録 |
| 日 | 60分 | 誤答リストの見直しと、翌週の配分の調整 |
大切なのは、毎週の最後に科目別の正答率を記録し、翌週の配分を決め直すことです。時間を増やすより、伸びていない科目に気づくことのほうが結果に効きます。
直前期のチェックリスト
- 4科目すべてで、本番形式の演習の正答率が50%程度の最低ラインを安定して上回っている
- 倫理・行動規範で、明らかな違反行為の選択肢を確実に見抜ける
- 120分で最後まで解き切る時間配分を、通し演習で確かめている
- 株式譲渡と事業譲渡の違いを、手続き・税務・契約の面から説明できる
- 企業価値評価の代表的な考え方を、計算の手順まで説明できる
- 誤答リストの論点を、1つずつ理由つきで説明できる
- 試験日・会場・持ち物など、公表された受験案内を確認している
相対評価で合否を決める想定が意味すること
募集要領には、初回試験であることから一律の合格点をあらかじめ決めず、各試験日の受験者の得点率や設問ごとの得点率などを踏まえて相対評価で合否を判定する想定が書かれています。あわせて、総得点の70〜80%程度を合格基準として設定することも想定されています。
このことから、勉強の進め方について2つのことが言えます。1つ目は、「6割取れれば大丈夫」といった目標の置き方が通用しにくいことです。2つ目は、ほかの受験者が正解しやすい基本問題を落とさないことの価値が大きいことです。難問を追うより、ガイドライン第3版の基本的な論点と倫理・行動規範の判断を確実にする方が、相対評価のもとでは効きます。
経歴別:時間を寄せる科目
| 経歴 | 有利になりやすい科目 | 時間を寄せたい科目 |
|---|---|---|
| M&A仲介・FAの実務者 | M&A実務 | 倫理・行動規範(実務の慣行と基準のずれ)、法務 |
| 銀行・信用金庫などの金融機関 | 財務・税務の一部 | M&A実務のプロセス、倫理・行動規範(利益相反の防止など) |
| 税理士・公認会計士 | 財務・税務 | M&A実務の流れ、倫理・行動規範 |
| 弁護士・司法書士 | 法務 | 財務・税務、M&A実務 |
| 実務経験がない人 | なし | 4科目を配点順に一巡し、A分類から潰す |
独学で進める場合の教材の組み方や期間別プランは、中小M&A資格試験は独学で受かるかにまとめています。
事業承継・M&Aエキスパート(金融業務2級)の勉強法とは別物
「M&A 資格 勉強方法」で検索すると、金融財政事情研究会の金融業務2級 事業承継・M&Aコース(事業承継・M&Aエキスパート)の勉強法が上位に出ることがあります。2級はCBT通年実施の民間検定で、出題分野も合格基準も中小M&A資格試験とは別に定められています。事業承継やM&Aの基礎という点で重なる部分はあっても、同じ勉強法で両方に対応できるわけではありません。2級の中身は金融業務2級 事業承継・M&Aコースで整理しています。
注意点・よくある失敗
- 配点の大きいM&A実務と倫理・行動規範を後回しにして、得意な科目ばかり勉強する。
- 倫理・行動規範を直前の暗記で済ませようとする(判断の問題に対応できません)。
- 最低ラインの想定を見落とし、配点の小さい法務を捨てる。
- 試験日が公表されてから計画を立て始め、準備期間が足りなくなる。
- 別の資格(金融業務2級など)の勉強法を、そのまま中小M&A資格試験に当てはめる。
- 公表資料の「想定」を確定情報として扱う。
よくある質問
中小M&Aガイドライン第3版の通読が起点です。4科目すべての土台になり、中小企業庁のサイトで無料で読めます。並行して科目別の現在地を測り、どの科目に時間を割くかを決めてください。
公式に示された時間はありません。確保できる総時間を決めて配点の比率で割り、週ごとに科目別の正答率が上がっているかを確かめる方法をおすすめします。正答率が上がらない科目は、時間ではなく方法を変えてください。
初回の試験前のため、過去問はありません。検討会の資料3(試験科目詳細)の項目リストと、募集要領の科目別の問数が、現時点で最も公式に近い「出題の地図」です。本番形式の演習は模試で代わりにできます。
中小企業庁のスキルマップ資料の区分に沿って、「この場面でこの行為は許されるか」を判断する練習をします。暗記よりも、理由をつけて判断できるかが大切です。検討会の資料では禁忌肢を設定する方向も示されているため、明らかな違反行為を見抜く練習を重ねてください。
出題の土台になる中小M&Aガイドライン第3版とスキルマップ資料は公表済みのため、先に始めた分はそのまま生きます。公表で変わる可能性があるのは、試験日や問数といった形式面です。形式が確定したら、スケジュールの日付と演習の形式だけを差し替えてください。
必須ではありません。出題の土台になる一次資料は無料で公表されています。独学で順番を決めきれない場合や、財務・法務の基礎を短期間で固めたい場合に検討してください。判断の目安は中小M&A資格の講座・スクールの判断にまとめています。
演習と弱点の把握には便利ですが、主教材は一次資料に置くのが安全です。CBT本番では120分で通して解くため、スマホの短い演習だけでなく、時間を計った通し演習も必要です。選び方は学習アプリの選び方をご覧ください。
週の学習時間から総時間を出し、配点で割った計画を試験日から逆算すれば、必要な期間の見当がつきます。16週前から始められれば、週に数時間でも4科目を一巡し、本番形式の演習まで進める計画が組めます。
一次資料・参考資料
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