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中小M&A資格

中小M&A資格の倫理・行動規範。48項目の全体像と学び方

先に結論

中小M&A支援の倫理・行動規範は、中小企業庁「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」(2025年4月/確認日2026-09-07)に合計48項目として整理されています。中小企業庁の委託調査報告書(令和7年3月)の条文初期案では、48項目は8つの区分に分かれ、最も多いのは善管注意義務・職業倫理の20項目(#2〜#21)です(確認日2026-10-28)。学ぶ順番は、項目番号の丸暗記ではなく、区分ごとの項目数と自分の関与場面から入るのが現実的です。

この記事の結論

  1. 01

    倫理・行動規範は試験のために作られたルールではなく、支援業務そのものの基準。まず読むべき公表資料は中小企業庁のスキルマップ資料と中小M&Aガイドライン第3版の2つで、どちらも無料で読める。

  2. 02

    中小企業庁の委託調査報告書(令和7年3月)の条文初期案では、48項目が8区分に配分されており、善管注意義務・職業倫理が20項目(#2〜#21)、情報管理が8項目(#40〜#47)、品位が6項目(#26〜#31)と続く(確認日:2026-10-28)。学習時間の配分も、この偏りに合わせるのが合理的。

  3. 03

    利益相反の防止は「仲介者が対象」と明示された小分類で、中小企業庁の委託調査報告書(令和7年3月)の条文初期案では#14〜#18の5項目(確認日:2026-10-28)。仲介とFAでは重心の置きどころが変わる。

  4. 04

    倫理・行動規範は合格後も続く。中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第5回検討会 資料2・2026年7月21日)では、登録時に提出する誓約書の内容として倫理・行動規範の遵守が、登録時・更新時の講習の柱として「M&A実務」・「倫理・行動規範」が、いずれも案として示されている(確認日:2026-10-28)。

  5. 05

    効率のよい順番は「区分ごとの項目数 → 具体的な項目 → 自分の場面」。項目番号から入ると、実務での判断に使えない知識になりやすい。

01

倫理・行動規範は何項目あり、どう分かれているのか

中小企業庁の委託調査報告書(令和7年3月)の条文初期案では、倫理・行動規範は#1から#48までの48項目が8つの区分に分かれています(確認日:2026-10-28)。

中小M&A専門人材(個人)向け 倫理・行動規範の区分・項目番号・項目数(出典:中小企業庁 委託調査報告書の条文初期案/確認日 2026-10-28)
区分項目番号項目数資料に挙げられている小分類主に問われる場面(当メディアによる整理)
基本原則#11小分類の記載なしすべての場面の土台。信義・公正・誠実に業務を行うという出発点
善管注意義務・職業倫理#2〜#2120善管注意義務/支援の質の向上/顧客利益の優先/利益相反の防止(仲介者が対象・#14〜#18)/報告義務/その他受任前の説明、契約条件の提示、進捗報告、譲渡先の選定
広告・営業#22〜#254虚偽・誤解を与える文言使用の禁止/不適切な営業活動の禁止提案資料、ウェブ広告、飛び込み・電話での営業
品位#26〜#316品位の保持/品位を損なう行為の禁止相手方や他の支援機関への言及、日常のふるまい
法令等の遵守#32〜#365法令等の遵守業法・個人情報・下請取引など、案件に付随する法令の確認
不適切な個人・組織、反社等との関係#37〜#393小分類は区分名と同じ相手方の確認、反社会的勢力の排除、取引の中止判断
情報管理#40〜#478情報の取り扱い/関係者の指導監督/不適切行為の禁止資料の受け渡し、社内共有、外部専門家への開示
その他禁止行為#481小分類は区分名と同じ個別の禁止条項に当たらないが不適切と認められる行為

区分名・項目番号・項目数は、中小企業庁(委託:PwCコンサルティング合同会社)「令和6年度中小企業活性化・事業承継総合支援事業(中小M&Aに係る資格に関する調査事業)調査報告書」(令和7年3月)に「条文初期案」として示された表記を2026-10-28に確認したものです。合計48項目という点は、中小企業庁「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」(2025年4月・中小企業庁事業環境部財務課)の記載と一致することを2026-09-07に確認しています。なお中小企業庁の中小M&Aガイドラインのページには、同スキルマップについて「※2026年10月13日更新 P71、P72の誤植を修正しています。」と記載されており(確認日:2026-10-28)、本記事の同資料に基づく記載は更新前の版を確認したものです。調査報告書の表記は「条文初期案」であり、最終的な条文として確定したものではありません。5列目は当メディアによる実務上の整理で、資料の記載ではありません。

学習時間の配分という観点では、この表の3列目が最初の判断材料になります。善管注意義務・職業倫理と情報管理の2区分で48項目のうち28項目、全体の約6割を占めます(上表の項目数の合計/確認日:2026-10-28)。

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02

なぜ資格より先に基準が公表されているのか

中小M&A支援では、支援機関に向けた中小M&Aガイドラインが2020年3月に策定された一方、個人を対象とする資格制度は中小企業庁の検討会で案の段階にあるため、行動の基準のほうが先に公表されています。中小M&Aガイドラインは2020年3月の策定後、2023年9月の第2版を経て、2026-10-28時点の最新版は2024年8月改訂の第3版です。第3版では、提供する業務の内容・質と手数料について中小企業が確認すべき事項の解説、仲介者・FAに対して求められる説明についての追記、営業・広告に係る規律の明記が盛り込まれました。あわせて、仲介者において禁止される利益相反事項の具体化、最終契約における当事者間のトラブルに発展する可能性があるリスクとその対応策の解説、不適切な譲り受け側を市場から排除するための対応、経営者保証の扱いも加わっています。

その翌年、2025年4月に公表されたのが、個人を対象とするスキルマップ資料です。ガイドラインが機関としての業務のやり方を定めるのに対し、こちらは中小M&Aに関わる個人を広く対象とし、仲介者・FA等の業態を限定しない形で、使命・倫理・行動規範と、知識・スキルの体系を示しています。知識はM&A実務・ビジネス・会計・法務・税務・情報の6分類、スキルは対業務・対関係者の2分類で整理され、事前相談、バリュエーション、マッチング、基本合意、DD、最終契約、クロージング、クロージング後(PMI)というプロセスの段階に沿って配置されています。

新しい資格試験について、中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第4回検討会 資料2・2026年3月17日)のスライド9には「試験科目は4科目(M&A実務、財務・税務、法務、倫理・行動規範)とする。」と記載されています(確認日:2026-10-28)。同資料のスライド9は、倫理・行動規範の科目について「よって本科目では、中小M&A支援人材として求められる倫理観および行動規範に関する基本的な考え方から、実務上留意すべき禁止事項・望ましい対応の知識について、判定する。」と記載しています。同資料のスライド18には「適切な試験実施のあり方は継続検討予定」と記載されており、科目ごとの配点・問題数、正式名称・試験日・受験料は未公表です。最新の公表状況は試験情報で確認できます。一方で、スキルマップ資料とガイドライン第3版はすでに公表されています。(当メディア運営者が提供するサービスです)

03

倫理・行動規範は合格後も続くのか

中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第5回検討会 資料2・2026年7月21日)では、倫理・行動規範は試験に合格した後も登録と更新の要件として続く設計が案として示されています(確認日:2026-10-28)。確定した制度ではなく、同資料の記載はいずれも案・想定の段階です。

  • 誓約書:同資料5頁は「誓約書:①倫理・行動規範の遵守、②取消事由に該当した場合の登録取消措置への同意 等の内容を想定」と記載しています。倫理・行動規範の遵守は、登録時に提出する誓約書の内容として想定されています。
  • 講習の中身:同資料6頁は「登録時及び資格更新時の講習内容としては、資格試験と同様に、『M&A実務』・『倫理・行動規範』を中心とした内容とするのはどうか。」と、疑問形の案として記載しています。合格後の講習でも同じ範囲を扱う案であり、試験の時点で覚えて終わりにできる範囲ではありません。
  • 登録の取消し:同資料10頁は取消要件として「欠格事由に該当したとき」「不正な手段で登録を受けたとき」「資格者としての信頼を失墜させる、不正・著しく不当な行為を行ったとき」を挙げています。3つ目は、個別の禁止条項に当たらない行為も対象になりうる書き方です。
  • 欠格事由:同資料10頁は「他資格に共通して設定されている明らかな欠格事由は踏襲(処分後対象となる年数等の微細な点の検討は必要)」とし、例として「行為能力・破産」「刑罰歴・暴力団関係」「再登録不可期間に該当する場合 等」を挙げています。

学習上の意味は、48項目のうち「その他禁止行為」(#48)のような受け皿の条項を軽く見ないことです。登録取消の要件に「資格者としての信頼を失墜させる、不正・著しく不当な行為」が案として置かれている以上、条文の網羅よりも趣旨の理解が効きます。登録・更新の手続き全体は中小M&A資格の登録制度と更新で整理しています。

04

48項目はどの順番で学べばよいのか

48項目は、依頼者との関係(#1〜#21)、外に向けた表現(#22〜#31)、相手を選ぶ判断(#32〜#39)、情報の扱いと受け皿の条項(#40〜#48)の4つのかたまりに分け、自分が関与する場面に近いところから読むのが現実的です。この4つのかたまりは、学習の順番を作るために当メディアが整理したもので、資料上の階層ではありません。

1. 依頼者との関係(基本原則・善管注意義務・職業倫理)

依頼者との関係にあたる基本原則と善管注意義務・職業倫理は、条文初期案の#1〜#21の21項目で、4つのかたまりの中で最も項目が多い部分です(中小企業庁 委託調査報告書・令和7年3月/確認日:2026-10-28)。顧客利益の優先、利益相反の防止、報告義務といった小分類が並びます。ここで問われるのは知識よりも判断で、「依頼者の利益と自分の報酬が食い違う場面で、どちらを選ぶか」が典型です。特に利益相反の防止は仲介者が対象と明示されており、売り手・買い手の双方と契約する構造そのものが論点になります。仲介とFAの違いはM&A仲介・FAの資格事情で整理しています。

2. 外に向けた表現(広告・営業・品位)

外に向けた表現にあたる広告・営業と品位は、条文初期案の#22〜#31の10項目で、虚偽・誤解を与える文言の使用禁止、不適切な営業活動の禁止、品位の保持が含まれます(中小企業庁 委託調査報告書・令和7年3月/確認日:2026-10-28)。実績の見せ方、他社との比較表現、初回接触の方法など、案件が始まる前の行動が対象です。ガイドライン第3版で営業・広告に係る規律が明記されたこととあわせて読むと、何が問題視されているのかがつかめます。

3. 相手を選ぶ判断(法令等の遵守・不適切な個人・組織、反社等との関係)

相手を選ぶ判断にあたる法令等の遵守と不適切な個人・組織、反社等との関係は、条文初期案の#32〜#39の8項目で、案件を受けるか、続けるか、止めるかの判断に直結します(中小企業庁 委託調査報告書・令和7年3月/確認日:2026-10-28)。第3版に不適切な譲り受け側を市場から排除するための対応が盛り込まれた流れと同じ方向を向いており、支援機関が誰と仕事をするかも規範の対象だという整理です。

4. 情報の扱いと受け皿の条項(情報管理・その他禁止行為)

情報の扱いと受け皿の条項にあたる情報管理とその他禁止行為は、条文初期案の#40〜#48の9項目で、情報の取り扱い、関係者の指導監督、不適切行為の禁止が含まれます(中小企業庁 委託調査報告書・令和7年3月/確認日:2026-10-28)。中小M&Aは秘密保持が案件の前提になるため、自分だけでなく社内の関係者をどう管理するかまでが範囲に入ります。「その他禁止行為」は、個別条項に当てはまらなくても不適切と認められる行為を対象とする受け皿です。

05

どの場面でどの区分が効いてくるのか

実務の場面ごとに効いてくる区分は異なり、受任前後の説明や報告は善管注意義務・職業倫理、提案資料や広告は広告・営業、譲り受け側の確認は不適切な個人・組織、反社等との関係、資料の共有・保管は情報管理が中心になります。実務の場面から逆に引くと、読むべき資料の範囲が狭まります。

実務の場面別・先に読む資料の対応(当メディアによる整理/確認日 2026-10-28)
実務の場面主に効いてくる区分先に読む資料
初回相談を受けた直後善管注意義務・職業倫理ガイドライン第3版(仲介者・FAに求められる説明)
仲介契約・アドバイザリー契約の締結善管注意義務・職業倫理(利益相反の防止)ガイドライン第3版(仲介者において禁止される利益相反事項)
手数料の提示・説明善管注意義務・職業倫理ガイドライン第3版(業務の内容・質と手数料)
提案資料・ウェブ広告の作成広告・営業ガイドライン第3版(営業・広告に係る規律)
譲り受け側の選定・確認不適切な個人・組織、反社等との関係ガイドライン第3版(不適切な譲り受け側の排除)
資料の共有・保管情報管理スキルマップ資料(情報の取り扱い・関係者の指導監督)
進捗の報告善管注意義務・職業倫理(報告義務)スキルマップ資料

学習として使うなら、この表を左から右ではなく、右から左に使うのが実践的です。資料を読んで「これはどの場面の話か」を言えるようにしておくと、実務で判断を求められたときに動けるようになります。学習の進め方は中小M&A資格の勉強方法にまとめています。

06

注意点・よくある失敗

  • 士業としての職業倫理を身につけているから大丈夫だと考える(税理士法・会計士法などの職業倫理と、中小M&A支援に求められる行動規範は範囲が異なります)。
  • 48項目を項目番号で暗記しようとする(区分と小分類の意味を先に押さえたほうが、場面への当てはめが速くなります)。
  • 8区分を同じ重さで学習する(条文初期案では善管注意義務・職業倫理が20項目、法令等の遵守が5項目と、配分が大きく違います)。
  • 利益相反を仲介だけの論点と思い込み、FAでの善管注意義務や情報管理を薄く扱う。
  • ガイドラインの版を確認せずに社内手順を作る(中小企業庁の中小M&Aガイドラインは、2026-10-28時点の最新版が2024年8月改訂の第3版です)。
  • 広告・営業の規律を営業担当だけの話として扱う(提案資料の表現も対象になります)。
  • 検討中の事項を確定した制度として顧客や社内に説明する(登録・更新の要件は第5回検討会 資料2の案の段階です)。
  • 公表資料を読まずに市販の解説だけで済ませる(一次資料は無料で公開されており、表現の細かな違いがそのまま判断の分かれ目になります)。

よくある質問

倫理・行動規範は、中小企業庁「中小M&A専門人材(個人)向け 使命、倫理・行動規範、知識スキルマップ」(2025年4月・中小企業庁事業環境部財務課)で公表されており、合計48項目が整理されています(確認日:2026-09-07)。同資料は中小企業庁の中小M&Aガイドラインのページから辿れます。

中小企業庁の委託調査報告書(令和7年3月)の条文初期案では、基本原則が1項目(#1)、善管注意義務・職業倫理が20項目(#2〜#21)、広告・営業が4項目(#22〜#25)、品位が6項目(#26〜#31)、法令等の遵守が5項目(#32〜#36)、不適切な個人・組織、反社等との関係が3項目(#37〜#39)、情報管理が8項目(#40〜#47)、その他禁止行為が1項目(#48)です(確認日:2026-10-28)。

中小M&Aガイドライン第3版は支援機関としての業務のやり方を定めるもの、スキルマップ資料は中小M&Aに関わる個人を対象に使命・倫理・行動規範と知識・スキルの体系を示すものです。実務の手順を確認するならガイドライン、自分に足りない知識やスキルを棚卸しするならスキルマップ資料が入口になります。

利益相反の防止は、スキルマップ資料および中小企業庁の委託調査報告書の条文初期案で「仲介者が対象」と明示された小分類(#14〜#18)です。ただし善管注意義務、顧客利益の優先、報告義務、情報管理といった他の項目はFAにも共通して関わるため、規範の対象から外れるわけではありません。

中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第5回検討会 資料2・2026年7月21日)6頁は、登録時および資格更新時の講習内容を「M&A実務」・「倫理・行動規範」を中心とした内容とする案を、疑問形で示しています(確認日:2026-10-28)。同資料5頁では登録時の誓約書の内容として倫理・行動規範の遵守が想定されていますが、いずれも案の段階で、講習の時間数・費用・実施団体は未公表です。

科目ごとの配点・問題数は公表されていません。中小企業庁「中小M&A市場の改革に向けた方向性について」(第4回検討会 資料2・2026年3月17日)スライド9には「試験科目は4科目(M&A実務、財務・税務、法務、倫理・行動規範)とする。」と記載され、倫理・行動規範の科目については「よって本科目では、中小M&A支援人材として求められる倫理観および行動規範に関する基本的な考え方から、実務上留意すべき禁止事項・望ましい対応の知識について、判定する。」と記載されています(確認日:2026-10-28)。正式名称・試験日・受験料も未公表です。

読み始める区分は、自分が関わる場面に近いところで構いません。仲介・FAとして受任する立場なら善管注意義務・職業倫理、外部への発信を担当するなら広告・営業、案件を受けるかどうかを判断する立場なら不適切な個人・組織、反社等との関係が入口になります。

更新・訂正履歴

  1. 最終確認

    記載の数値・制度情報を、一次資料・公式情報で確認しました。

  2. 初回公開
開示

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